こんにちは、教習指導員のひろくん(@hirokun_index)です。
このブログは、自動車教習所の困りごとについて解説しています。
今度免許を取りに行こうと思います。
近くの教習所に通うか合宿免許で取るか迷っています。
今回の記事は、こうした合宿免許に関する悩みや不安に答える記事になっています。
ネット検索をすると、合宿免許のメリット・デメリットについて解説しているサイトをたくさん目にします。
ですから今回の記事では、それらの一般的なメリット・デメリットに現役教習指導員の視点も交えつつ合宿免許について解説しています。
指導員ならではの合宿免許のメリット・デメリットや、合宿免許に向いている人・向いていない人の考察、それに合宿免許を実施する指導員側の本音など参考にしてくださると嬉しいです。
また、合宿免許に参加することを決心している人は以下の記事も参考にしてください。合宿免許のときに気をつけるべきポイントについてまとめていますよ。
合宿免許のメリットは?
合宿免許とは、自動車教習所が準備した宿泊施設に一定期間宿泊しながら、短期集中的に免許を取得する方法を言います。
基本的には、自分の住んでいる地域とは別の地域(特に地方部)の教習所に泊りがけで通うというスタイルであるため、メリットがある反面デメリットがあることも理解しなければなりません。
まずは、合宿免許のメリットについて見ていきましょう!
①教習料金が安い
やはり合宿免許を選ぶ多くの人が、教習料金の安さを一番のメリットとして感じているのではないでしょうか?
我々教習指導員が合宿免許の教習料金を見ても「よくこれでやっていけるなあ。」とびっくりするような低価格のところもあります。
値段が高かろうが安かろうが「免許」は「免許」ですから、少しでも教習料金が安いほうがいいですよね。
②短期集中で教習を進めることができる
実は、教習指導員的には、料金よりも、短期集中で教習を進めることができる点が一番のメリットだと感じています。
というのも、教習期限といって「○月○日までに卒業しないといけませんよ」という最終期限が存在するからなんです。
ずっと教習所に在籍できるわけではなく、普通免許の場合教習期限は9ヶ月になります。
そんなおおげさな!!免許を取るのに9ヶ月もかかるわけないでしょう?
いやいや、意外と期限ギリギリになる人は多いんですよ。
「9ヶ月もあれば楽勝だよ。」と初めは思うのですが、仕事や学校、バイトなどしておられる人は意外と教習に割ける時間は少ないはずです。
また、運転がうまく行かず、教習所が嫌になって長欠される人も少なくありません。
その点、合宿免許は、入所時(申込時)に卒業日までの日程を組んでしまいます。
ですから、通学と違って短期集中で免許取得できるよう予定を組んでくれますから、中だるみしてしまいそうな人には安心できる免許取得方法といえるでしょう。
③旅行気分が味わえる
前述したとおり、合宿免許は基本的には自分が住んでいる地域ではないところで宿泊しながら免許を取りますから、一種旅行気分が味わえます。
この点は、特に旅行好きな人には大きなメリットと言えるでしょう。
合宿免許っていいところだらけじゃん。
しかし、ここからが今回の記事の肝になります。
では、次は合宿免許のデメリットも説明しますね。
合宿免許のデメリットとは?
合宿免許のメリットだけ見ると、合宿免許一択という感じがしますが、当然デメリットもあります。
後で悔やまないように、事前にしっかりデメリットも把握しておきましょう。
①きちんと予定が組まれていること
教習所が予定を組んでくれているなら楽じゃないですか?
なぜそれがデメリットになるのですか?
確かに、合宿免許は基本的に短期間での卒業を目指しますから、入所日から卒業日までガッチリと教習スケジュールが組まれています。
それは、ほとんどの人、特に進学や就職などで急いで免許を取得しなければならない人にとっては大きなメリットです。
しかし、反面、スケジュールがビッシリ組まれてるということは、寝坊や遅刻はご法度なわけです。
でも、現実遅刻や寝坊する教習生も一定数います。ですから、無断キャンセル対策で教習所によってはキャンセル料を設定しているところも多いんですよ。
また、体調不良などで教習を欠席したりしても、卒業日が遅れることもあります。
ですから、合宿免許のパンフレットやウェブサイトには「普通AT免許最短14日~」なんて書いてありますが、延長のリスクがあることも承知していなければなりません。
②教習料金は時期に注意すること
次に教習料金についてです。
一般的に教習料金は通学教習所に比べて安価であることが多いです。しかし、合宿免許は時期により教習料金が変動します。
教習所業界は、以下の表のように忙しい時期と暇な時期に分かれます。
月 | どんな時期? |
---|---|
2〜3月 8〜9月 | 繁忙期 |
上記以外 | 閑散期 |
確かに、閑散期は教習指導員もびっくりするくらいの低価格で免許が取れます。
しかし、よくパンフレット等見てみると、繁忙期は通学教習所とさほど値段が変わらないことが多いです。
ただし、それが、宿泊費や食事代込みの値段であれば、純粋な教習料金はやはり通学教習所よりも圧倒的に安いですけどね。
ただ、「合宿免許=安い」という先入観だけで合宿免許を選択すると、思いのほか安価でなくがっかりなんてことになりかねませんから注意が必要です。
そして、最近では通学スタイルの教習所でも、繁忙期には「ハイスピードプラン」といったプランがあり、通常の教習料金にオプション料金をプラスすれば、短期間で免許取得可能です。
短期間で免許を取りたい目的で合宿免許を考えている人は、近所の自宅から通える教習所にもそうした短期集中プランがあれば、比較検討してみても良いでしょう。
③補修できない指導員の苦悩
それにしても、合宿免許の教習料金の安さは、教習所業界に身を置くものとしても驚かされるような値段設定だったりします。
私自身は、教習指導員歴15年のまあまあベテランの部類で、今まで仕事や研修、講習を通じて、近隣の教習所の指導員や全国の教習指導員とたくさん情報交換してきました。
ここでは、これまでの情報交換の中で、合宿免許に携わる指導員から聞いた、指導員の苦悩について少し紹介します。
合宿の値段設定は薄利多売だから、生徒さんをたくさん回してなんぼ。だから少し無理をしたり目をつむって補修はしない。
合宿免許を実施している教習所のA指導員
私の勤める教習所は、近隣の教習所に比べると教習料金は少し高めです。教習料金を下げるということは、我々の給料にもろに直結するからです。
その代わりに、他教習所校さんに負けないように徹底的に接遇に力を入れて教習生の満足度を上げる戦略を取っています。
だからといって、合宿免許の教習所の接遇が悪いといっているわけではありませんからあしからず。
接遇に力を入れていて評判も良く、しかも低価格の教習所の噂もたくさん耳にします。ですから我々通学教習所の指導員も頑張らねばと常に思っています。
また、こんな指導員もいました。
検定に合格するレベルに達していないので補修をつけたところ、上司に呼び出されて「補修をつけたら卒業時期が伸びるじゃないか!」と怒られた。
合宿免許を実施している教習所のB指導員
もちろん補修になるのは、全面的に教習生の技量不足とは言いません。指導員の指導力不足の側面もあるでしょう。
経営陣からすると、補修なしのストレートで最短期間で免許取得してくれたほうが良いから、こうした言い方になるのでしょう。
でも、このB指導員のような怒られ方をすると仕事に対するモチベーションはぐんと下がります。
ついでにもう一つ。
補修つけて生徒さんに恨まれるくらいなら、少しくらいの技量不足ならみきわめ通す。それでもし検定に落ちてもそれは生徒さん自身のせいになるから。
合宿免許を実施している教習所のC指導員
誤解のないように補足をすると、すべての教習所が上記の通り補修をしたいと思っても会社の方針やなにやらで補修を避ける傾向にあると言っているわけではありません。
でも、短期集中と教習料金の安さを売りにしている合宿免許の場合、現実、補修をつけたくてもつけられないといった教習所が出てくることは自明の理ではないでしょうか?
合宿免許に向いている人
以上、合宿免許のメリット・デメリットを踏まえた上で、教習指導員的に、合宿免許に向いている人・向いていない人について考察してみます。
①運転が得意な人
普通免許を取りに行こうと思っている人は、車を運転したことがありませんから得意も不得意もないのですが…。
たとえば、難易度の低いAT限定免許や、教習時間が普通免許よりも長い準中型免許の場合、補修になる確率が低いです。
補修なし、検定一発合格の可能性が高ければ、合宿免許の売りである「短期取得」のメリットを享受できる確率が上がります。
そういう意味で、運転が好きであるとか、運転にさほど不安を感じていないという人は合宿免許向きと言えます。
また合宿免許は、教習生の人がその教習時間の内容がきちんと理解できているか否かに関わらず、定められたスケジュールにしたがってどんどん教習が進みます。
逆を言うと運転が好きではないとか、親が免許を取りに行けというから仕方なく取りに行くといった受身の姿勢だと合宿免許の進度について行くのも厳しくなる恐れがあります。
②閑散期にまとまった時間の取れる人
基本的に合宿免許は、免許取得までの数週間、宿泊施設で泊まり込みですから、求職中の人や学生さんさんなどでまとまった休みの取れる人でないと合宿免許の利用自体が難しいでしょう。
また、合宿免許の売りの1つである「低料金」のメリットは、閑散期に利用してこそ享受できるメリットになります。
③早く免許を取らなければならない人
特に、2〜3月の冬の繁忙期の場合、4月の進学・就職までの短期間で運転免許を取得する必要があるために入所者が殺到します。
そのため近隣の通学教習所では、新生活までに免許取得が間に合わない場合もありますし、そもそも、入所制限をしていて入所すらできないケースも多々あります。
そういった場合、短期集中の合宿免許であれば卒業日までのスケジュールが組まれているから安心ですね。
合宿免許に向いている人については、詳しくは以下のサイトも参考にしてくださると嬉しいです。
合宿免許に向かない人
一方、前述した合宿免許のデメリットを考慮すると、こんな人はもしかしたら近隣の通学教習所を選択したほうが良いかもしれません。
①運転に不安がある人
合宿免許は、最短期間で免許が取れるようスケジュールを組みますから、毎日どんどん教習が進んでいきます。
言葉は悪いですが、教習生がその教習を理解しているかどうかなどそっちのけで定められたスケジュールでどんどん各課題をこなしていきます。
ただ、それでも運転が上手な人は全く問題ありません。
しかし、私が担当する教習生の人でも、運転が苦手な人で、指導員的に1日複数時間教習しても教習効果が上がらないだろうなあという人が現実います。
そういう教習生に対しては、わざと技能教習を1時間にとどめたり、毎日教習せずに2〜3日に1度にしたりと、その人の教習進度や上達具合によって技能教習をわざとセーブすることもあります。
もちろん、その分短期間で免許を取ることはできませんが、中には、ゆっくりと時間をかけて教習を進めるほうが、結果的に運転がうまくなる人もたくさんいます。
自分がそういうタイプかもと思う人や、運転に不安がある人は、合宿免許ではなく通学免許を選ぶほうが負担がかからないかもしれませんね。
②朝が苦手な人や時間にルーズな人
これは、考え方によってはメリットになるため純粋なデメリットとは言えないかもしれません。
ただ、前述したとおり合宿免許は最短ルードで免許が取れるようスケジュールを組んでいますから、遅刻や寝坊などで教習を受け損なうとその分卒業日が延長になることもあり得ます。
閑散期であれば、寝坊などで技能教習をすっぽかしても他に空きがある指導員がいて、その穴埋めができますが、繁忙期はそれもほぼ不可能です。
特に学科教習は、その月の学科の時間割をあらかじめ公安委員会に提出していますから、遅刻した教習生のために臨時的に学科教習を開催するといったことが基本的にはできません。
ですから、時間にルーズな人や朝が苦手という人は、通学スタイルを選ぶほうが無難かもしれません。
ただし、時間にルーズだからこそ、きっちりとスケジュールが組まれていたほうが頑張れるという人は合宿免許向きでしょうね。
まとめ
最後に誤解のないように補足しておきます。
私の勤める教習所は合宿免許はやってない、いわゆる通学スタイルの自動車教習所です。
通学スタイルの教習所選びは以下の記事を参考にしてみてください。
今回、指導員の本音も含めて、他のサイトには書いていないような合宿免許のデメリットも記事にしましたが、合宿免許が駄目というわけでは決してありません。
合宿免許に向いている人は、教習料金も安く、短期間で免許取得でき、旅行気分も味わえて、きっととても楽しい教習所ライフになると思います。
ただし、今回の記事で知っていただきたいのは、逆に、合宿免許には向いていない人も一定数いるという点なのです。
この記事を参考に、自分にとって合宿免許が合っているかどうかぜひ考えてみてください。
そして合宿だろうが通学だろうが、せっかく高いお金を払うのですから、運転免許取得のための教習所が、あなたにとって楽しく、思い出深いものになることを指導員として切に願っています。
教習所が楽しいと思ってもらえると、指導員としても嬉しいです。
最後まで読んでいただいて、本当にありがとうございました。
合宿免許に興味のある人は、この記事で合宿免許サイト厳選5選を解説していますからご覧くださいませ。
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